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トラックドライバー2人に1人が喫煙 他職種に比べ高い喫煙率(2025/10/08)
運転中のたばこ 死亡リスク1・54倍に
全日本トラック協会はこのほど、運転中のたばこに関するチラシを作成したが、その中にはトラックドライバーの喫煙率が他の業態と比べ非常に高いこと、また、運転中にたばこを吸うと交通事故死亡リスクが1・54倍高くなるということが記されている。
厚生労働省が公表した2023年の「国民健康・栄養調査」によると、国民全体の喫煙率は15・7%だった。一方、同年に全日本トラック協会が実施したアンケート調査によると、トラックドライバーの喫煙率は48・6%と実に3倍以上に上っている。
なぜトラックドライバーの喫煙率が高いのか。
健康経営のサポートを行っている心幸ウェルネス㈱(兵庫県)が、2023年に運送業のドライバー106名に対して行った、「運送ドライバーの喫煙に関する実態調査」によると、喫煙の理由(複数回答)は最多が「リフレッシュをするため(60・8%)」で、「ストレス解消になるため(58・8%)」がそれに続いた。
また、「先輩や上司ともざっくばらんに話せるため(19・6%)」という意見もあり、コミュニケーションのツールとして活用しているドライバーもいる。
1日あたりの喫煙量(単一回答)は、「1本~10本(37・7%)」が最も多かったが、31本以上という回答も全体の13・2%あった。
ある運送会社では、「ウチでは50~60代のドライバーが多いというのもあってか、ほとんどの従業員が未だに紙のタバコを吸っている。タバコの金額も上がっていて、1日1箱吸うと月2万円ぐらいかかる。やめたいと言っているドライバーも多いが、周りが吸うのでついつい吸ってしまい、三日坊主で終わるといったドライバーも多い」と話している。
トラックドライバーの喫煙率の高さについて、運送業界に詳しいコンサルタントは、「タバコはタクシーやバス業界でも吸う人が多いが、中でもトラックドライバーはそれが顕著。横にお客さんを乗せているわけでもないので、人の目を気にする必要もなく、やめる理由付けが弱いのではないか」と分析する。
運転中にタバコを吸うドライバーもいるだろうが、しかしそこには、大きな危険がある。脇見運転の可能性だ。
全ト協が公開している、「法令違反別の死傷事故構成率(2023年)」によると、脇見運転は安全不確認に次ぐ死傷事故原因の2位となっており、全体の17%を占めている。
2022年11月、群馬県安中市の上信越自動車道で、たばこを取るための脇見が原因で玉突き事故が起き、5人が死傷。2014年5月には、埼玉県内でバス停に停車していた路線バスに大型トラックが追突し、10人がケガをするという事故も起こっている。これも車の中で落ちたタバコを拾おうとしたことが原因だ。
例えば3秒間の脇見をした場合、時速40㎞では約33m進むことになる。これは、大型トラック約3台分の距離だ。時速100㎞の場合は、約83mにもなる。タバコを取る、火をつけるなどわずか数秒間の行為であっても、脇見運転のリスクは非常に大きい。
また、東北大学の研究では、たばこを一日20本以上吸う男性は、吸わない人と比較して交通事故で死亡する危険性が1・54倍高いという研究結果が出ている。
運転中の携帯電話の使用は、運転操作が不安定になることから危険な行為とされ、道路交通法で規制されているが、同様の状況が起こると考えられる喫煙に対しては規制がない。イギリス、イタリア、台湾では運転中の喫煙が法律で禁止されている。(10月6日号)
【グラフ】運転中にたばこを吸うと交通事故死亡リスクが1.54倍高くなるという調査結果がある(東北大学調べ)