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「インフラ支えるドライバーがなぜ高いリスク背負う?」 全国軽貨物協会・西田代表 設立時の思いを語る(2025/05/25)
設立にあたり事業を譲渡し経営から退く
一般社団法人全国軽貨物協会(全軽協、東京都)は軽貨物事業者のための団体。2022年7月に西田健太氏が中心となって設立された。西田氏が全軽協を作ろうと思ったきっかけは、2021年初旬、コロナが少しずつ落ち着いてきた頃。当時自社で30名、協力会社を含めると60名のドライバーを抱え、軽貨物運送業を経営していた。
ある朝倉庫で皆が仕分け作業をしていると、西田代表の元へ25歳のドライバーが「子供ができました。結婚します」と報告してきた。「そうかおめでとう!頑張れよ!」と喜んだが、次に彼の放った言葉は、「僕はこのままこの仕事を続けていて大丈夫ですか?」だった。西田氏は一瞬言葉に詰まった。
実は彼は自社ドライバーの中でも稼ぎ頭で、月70万円を売上を上げるくらいの頑張り屋だった。休みを取らず働き詰めで、仕事に対して真面目なドライバーだった。
普通の社長なら辞めさせたくないと思うだろうし、これからも一緒に稼ごう!と引き留めるだろうが、自身も2人目の子供が生まれた頃で育児の経験から、彼は今後子育ての大事な場面に立ち会えないだろうなと思ったという。
彼の結婚する相手の女性とも家族ぐるみでご飯を食べに行くような付き合いだったので、万が一事故が起きれば彼女が悲しむ事になるとも思った。
今までも分かっていたはずなのに、急にイメージの解像度が上がってリアルに考えてしまった。
答えに窮した自分をけげんそうに見ていた彼に西田氏は、「とりあえず半年分の生活費を貯めろ。君がやりたい職業の社長を紹介してあげるから、転職し半年間そこでただ働きをしなさい」と言った。
西田氏は当時軽貨物だけではなく営業支援の仕事もしていたので、運送業界とは関係ない他業種の事業者にも多くつてがあった。彼も若かったし根性もあったので、半年間無給で勉強しますと言えば、雇ってもらえるだろう、半年あれば一人前になるだろうと考えたのだ。
その後西田氏は、なぜ自分は彼について来いと言えなかったのか、会社の働き方がヤバいのなら、もっと自社のドライバーを守れるようにしようと考えなかったのか、自問自答した。
彼だけを支えて守ったところで、自社の残り29人のドライバーは救われない。事故が起きる可能性は歴然とある。また、自社だけが上手くいったとしても協力会社にしわ寄せが行くだろう。
協力会社のその先には、同じ現場を走っている他社の軽貨物ドライバーがいる。
常日頃から、「自社だろうが他社だろうが、皆でインフラを支えてるんだよ。助け合いだよ」と言い聞かせていた。
「皆に生活があるし家族がいるし、そんなに稼げていない中で色んなものを犠牲にしながらインフラを支えている。そんなドライバーがなぜ高いリスクを背負わなければならないのだろう」
1週間考えた結果、この問題を解決するためには業界団体の設立が必要との結論に至った。そこから1年かけ準備し、2022年7月に一般社団法人全国軽貨物協会を設立した。
設立にあたって西田氏は事業を譲渡し経営から退いた。理由は、軽貨物業界をまとめるためだ。
公正中立を保ち、業界を一つにするためには、軽貨物運送事業の経営を辞め、真っ白な状態で挑む必要があると覚悟を決めた。
「片手間に出来るものではない、どんな色も付いていない人間が一人専従し、課題解決に向かう。軽貨物業界自体はあまり注目されていないが、皆頼りきっている。地域や組織の垣根を超え、すべての軽貨物事業者が自由に参加できる環境を提供し、業界全体の結束を強化しながら『業界の健全な発展』を目指していく」と力強く話す。(5月19日号)
【写真】西田代表