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深夜割引見直しは働き方改革に逆行か(2025/04/27)
『仕事は深夜にしろ』と言ってるようなもの?
今年7月に予定される「高速道路の深夜割引見直し」について、「働き方改革」に逆行する改悪だと考えている運送会社が少なくない。どういう点が問題であるべき姿はどうか、声を聞いた。
「0時~翌4時」の間に高速道路を走ると3割引になるという深夜時間帯の割引制度はもともと、一般道の沿道環境を改善する目的で2004年に始まった。
しかし、「0時~翌4時」の間に「1秒でも」高速道路内にいれば、走った分の高速料金が3割引となるため、0時を過ぎてから高速を降りることで割引を適用させたいトラックが料金所前や周辺のSA・Aにあふれ返る「0時待ち」が日常的に起こっている。
この問題を解決する目的もあり、料金制度が見直されるが見直しの主なポイントは次だ。
①3割引の対象となる時間帯が現行の「0~翌4時」から「22時~翌5時」へと変わり、対象時間が3時間増える。
②割引対象時間に高速道路上にいれば、その走行全てに割引が適用される現行制度から「割引対象時間に走行した分」のみの割引へ変わる。
③高速道路利用時に適用されていた割引が「ETCマイレージサービス」や「ETCコーポレートカード」で後日還元される形に変わる。
④400㎞超の走行を対象にした「長距離逓減(ていげん)制の拡充」も合わせて行われる。ETC登録の有無に関わらず全ての車両が対象となり、例えば800㎞以上の走行だと50%割引と割引幅が大きくなる。
しかし、今回の制度見直しは「改悪」だと声を上げる事業者が少なくない。
トキハマエキスプレス㈱(大阪府岸和田市)の原田幸之助社長は「新制度をフルに活用しようとすれば、『22時~翌5時』という労働基準法上で、『深夜』とされている時間帯に運行せざるを得なくなり、トラックドライバーに『仕事は深夜にしろ』と言っているのに等しい。国を挙げて『働き方改革』を推進していることと完全に矛盾した内容だ」と憤る。
三栄運輸㈱(三重県伊賀市)の山本貞夫会長も「トラックであれば時間帯を問わず一律割引にするといった分かりやすい仕組みにすべき。わざと複雑で分かりにくくしているようにしか思えない」と話す。
こうした声に対し、あるトラック協会は「見直しについての声は承知している。深夜の割引は『深夜に走れ』ということではなく、あくまで選択肢の一つ。本来、高速代は荷主が負担するもの。令和2年に『標準的な運賃』が告示され、運賃・料金・実費負担が明確に区分されたが、それより前の認可運賃の時代から高速代は荷主負担とされてきた。この点も踏まえ議論する必要がある」と説明する。
ある運送会社の会長も、「高速代を出してもらえるよう業界をあげて仕組みを作っていく必要がある。観光バスやタクシーに乗る場合は高速代を客が負担する。トラックの場合だけ運送会社が高速代を負担していることが多い現状が不自然。
例えば、関西から東京まで荷物を運んで、帰りの荷物を積むのに栃木に移動する場合、その間の高速代も荷主からもらえるようにしていく必要がある」と話す。
一方、岐阜県のある運送会社は「直荷の場合はそうした交渉ができるかもしれないが、運送会社からの下請けの場合、話を通せる会社がどれほどあるだろうか」と疑問を投げかける。
㈱アイエヌライン(福岡県築上郡)の田村務副社長も「『標準的な運賃』が業界に浸透していない状況での今回の見直しは、運送会社の経営を著しく圧迫させる。定期の往復便で荷主が一社の場合は運行ダイヤが明瞭なので、荷主に高速代について交渉しやすいが、行きと帰りで違う荷主の場合、運送会社のコンプラ遵守のための高速利用に関して自分ごととして考えてもらうことは期待できない」と、まずは「標準的な運賃」の普及が急がれるべきと訴える。(4月21日号)