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クローズアップitiran

「Gメン」でどこまで改善されるか(2023/12/27)


悪質な荷主ほどGメンなめている?



 国土交通省は6月に「トラックGメン」制度を創設し、トラック運送に関わる不適切な取引の監視をはじめた。トラックGメンは本省の自動車局だけでなく、全国各地の運輸局にも配置され、計162人が「プッシュ型の情報収集」に取り組んでいる。トラックGメンの活動で、こうした状況はどこまで改善されるのだろうか。


 10月に九州運輸局のトラックGメンが、高速道路SAで休憩中のトラック運転手に声を掛け、聞き取り調査を行った。
 運輸局の担当者は「得られた情報を集約し、不適切な事例が判明した場合には、是正に関する働きかけや要請を行うなど、具体的な行動につなげられるようにしていきたい」と話すが、運送会社をとりまく状況に変化がみられているかというと、必ずしもそうではない。
 奈良県の運送会社A社では、「雑貨などを運ぶ仕事で、元請けに運賃の値上げ交渉を持ちかけたところ、『明日から来なくていい』と仕事を切られた。幸い会社として大きなダメージは被らなかったが、月300万円程の売上になる仕事だったから、切られた当初はそれなりに現場が混乱した。
 この元請けは昔から高圧的というか、下請けの足元を見て当然の権利のようにピンハネをする業者として、同業者の間でも有名。しかし、この元請けにGメンが来たという話はいまだに聞かない。国は取り締まりを強化してるというが、本当にそうなのか、疑いたくなる」と話す。


 大阪の運送会社B社は、「2024年を目前に控え、国も『荷主対策』の実績を示さなければならなくなった。トラックGメンという名称は、いかにも『正義の味方』という印象でマスコミ受けが良い。派手に動けばそれなりに目立つから、国が『荷主対策』の実績をアピールするには好都合だ。
 トラックGメンは国のポーズに過ぎないということを荷主は見抜いており、彼らを本気で怖がっていない。とくに悪質な荷主ほどGメンをなめているのだから、現状が改善するわけがない」と話す。
 一方、京都の運送会社C社は、荷主対策が進まないのは、運送会社自身にも問題があると指摘する。
 「トラック1台を走らせるのにかかるコストは、大手だろうが中小だろうが基本的に同じだ。したがって、運賃交渉でも大手や中小で大きな違いはない。問題なのは、中小運送会社の中に『恐喝まがいの運賃交渉』しかできない会社がいることだ。質の悪い運送会社は、『トラックGメンが取り締まりを強化しているらしいですよ。おたくは中々値上げをしてくれませんが、大丈夫ですかね』と言って荷主を脅す。こんな運送会社がいる限り、荷主は心を開いて交渉に応じてはくれない」と話す。


 国交省は、「トラックGメン」による集中監視月間(11月~12月)のスタートに当たって、Gメン創設後の活動実績を公表したが、10月末時点で「働き掛け」は166件、「要請」は6件に上っており、Gメンの創設前と比べてわずか3カ月で倍増し、確実に成果を上げている。担当者は「今後も違反原因行為の解消に向けて、不適切な事例には迅速に対処していきたい。悪質な荷主には『働きかけ』『要請』『勧告・公表』といった措置を積極的に講じていく」と意気込む。
 今後の動きに注目したい。