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無人運航船 2025年にも実用化(2023/06/25)


コンテナ船 往復790キロを「自動航行」


船員不足解決へ期待



 トラックでいう「自動運転」が船でも開発が進んでいる。昨年3月、コンテナ船「すざく」(全長95m、749トン)は、東京港と津松阪港(三重県松阪市)往復790キロの「自動航行」に成功した。日本財団が進める「無人運航船プロジェクト」の一環として実施された実証実験で、往復約40時間のうち往路97・4%、復路99・7%を自動航行した。
自動航行とは、離岸操船、湾内航行、沿岸航行、着岸操船の一連の航海を船員の操作なしで行うことを指す。これまで船員によって行われてきた「情報収集」「分析」「計画」「承認」の作業を、自船把握用のセンサーと避航航路策定システム、自動制御システムなどの機械が担う。
 東京湾は1日に約500隻が航行し、パナマ運河の約40隻、マラッカ・シンガポール海峡の約320隻をはるかにしのぐ海上交通過密海域である。
日本財団によると、船舶交通量が特に多い浦賀水道(東京湾)を抜ける際は、多くの漁船を避けるため陸上での遠隔操船に切り替えた。また、追従速度が追いつかず船長の操船に切り替えた。衝突を避ける技術など混み合う海域での自動操船については、まだ課題があると説明する。
 陸上での遠隔操船は、陸上支援センター(千葉市)より衛星通信を利用して行われた。海上の船員が担う、気象・海象、行き交う船舶の動静把握、船上機器状態などを陸上で把握して自動航行をサポートし、緊急時には、陸上支援センターからの遠隔操船に切り替える。
 日本財団では、技術面の課題に加えて国際条約に基づく規則、国内法令の整備、保険など様々な課題があることを認識し、2025年の実用化を目指すとしている。
国土交通省の統計によると、国内航路の船員数は、2021年に2万8000人余りで、この30年で半減した。50代以上が45%を占め、高齢化も課題となっている。無人運航船は、高齢化や船員不足の解決にも役立つ可能性があると期待されている。
 日本財団海洋事業部海洋船舶チームの桔梗哲也チームリーダーは、「船上でのハードな仕事が要求され、一度乗船すると3か月ほど帰宅できない特殊な労働環境の内航海運業界では、船員の高齢化が進み、船員確保が大きな課題。人材不足の結果、約400の有人離島の中には週に1便以下しか船の便がないところもあり、離島航路の船員確保や航路維持にも苦労している。また、海難事故の約8割が人的要因(ヒューマンエラー)で、船舶の安全性向上も喫緊の課題。無人運航船に関する技術の開発は、船員の労務負担の軽減や人材不足、船舶の安全性向上に対する課題解決策の一つになると考えている」と話している。
 将来的には、人の代わりに機械が認知、判断、操船を担う形となることが考えられ、船員は、陸上で常時船舶のモニタリングや船のメンテナンスを行い、旅客船の場合には、旅客対応を船員が行う形になる事が予想される。(6月19日号)

【写真】自動航行を行ったコンテナ船「すざく」