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「働き方改革に対応できない」 増え続ける運送業M&Aの背景(2021/06/20)


2020年91件


専門家「2024年までは駆け込み増加」


M&Aに関する情報を提供している㈱レコフデータ(東京都)によると、物流企業が関わったM&Aの件数は、2019年が88件、2020年が91件と増加傾向にある。この数字は非公開案件を含んでいないため、実際にはこの数倍程度あるとされている。専門家の間では、今後も物流業界のM&Aは増えていくと分析。特に2024年までは駆け込みのように増加すると見込んでいる。
物流業界のM&Aが活発化していることについて専門家の意見を聞いた。
M&A支援を行う㈱N総合会計コンサルティング(大阪市中央区)の平野栄二氏は現状について次のように話す。
「通販の需要が高まる中、拡大している会社はドライバーと車両を求めている。売り手が募集したら、買い手が何十社といた運送会社もあるほど、運送会社は売り手市場の状況。
ここ2~3年、国が運営する事業引継ぎセンターには70代後半の人が相談に来ることも多いとい、業績がいい会社は今が買い時で、どんどん買収しようとしている。
M&Aの売り手から見たメリットは、廃業したら車両を二束三文で売却しなければならないが、M&Aだと会社が継続するため、一般的な中古車くらいの価格で売れること。また、株式を譲渡することで現金が手に入る。社員の雇用を守ることもでき、取引先にも迷惑を掛けないため、三方良しとなる」
M&A仲介大手・㈱日本M&Aセンターの山本夢人氏は背景について次のように話す。
「大きな理由は、平成2年の規制緩和から30年が経ち、当時起業した経営者が60代後半や70代になって引退の時期を迎えていること。それに伴い、後継者不在の会社が増えている。
また、働き方改革が物流業界のM&Aの拍車をかけている。働き方改革により、様々な業界で労働時間が制限されているが、物流業界は2024年までに働き方改革に対応できるかが重要なポイント。
働き方改革に自社だけでは対応できない会社が、『他の会社と組んで助けてもらいたい』というニーズが増えている。
労働時間を削減するには、今までは1人で運転していたところを、2人に増やす必要がある。しかし、中小企業が2人のドライバーを採用するのは難しい。拠点を増やそうと思っても、9割以上が中小企業なので設備投資ができず、大きな会社に助けてもらわなければならない」
山本氏によると、物流事業者のM&Aで、ここ2~3年で増えてきたのが、2代目の社長が社長という職務を続けながら、株だけを大きな会社に移すケース。その場合、その会社が子会社となり、その子会社の社長を続ける。
また、近年は未払いトラブルが発生しているが、会社の売却価格については、未払い残業代がある会社の場合、それを織り込んだ価値になるという。